第七計 無の中に有を生ず
「誆は、誆に非ず、其の実誆する所なり。少しく陰、太だ陰、太だ陽なり」「無の中に有を生ず」とは、虚々実々、虚から実へ、虚中に実を在りなどの方法を利用し、見せかけの形勢で敵軍を欺き、敵軍の情勢判断と軍事行動を誤らせ、敵軍の不意をついて殲滅する作戦である。
時代背景
本計の例話は唐朝に仕えたソグド人(イラン系住民で、貿易のため長安にも多数住んでいた)の武将で叛逆の臣として有名な安禄山が、唐の中期(七五五~七六三年)、宰相楊国忠との権力闘争に敗れて挙兵した安史の乱の一齣である。 叛乱軍の部将令狐潮が雍丘(河南省開封市の東南五十キロのキ県)を包囲したとき、守将の張巡は、第一回は城壁から藁人形を下ろして敵を奇襲し、無中に有を生じる本計略で敵を打ち破った。
張巡のワラ人形作戦
騙すことは騙すことではない。それゆえ、騙さなければならない。すなわち、偽りもあれば真もあるので、偽りで真を覆い隠し、敵軍が真偽を判断しにくいようにして騙さなければならない。