第二十一計 金の蝉、殻を脱ぐ
「其の形を存し、其の勢いを完つ。友疑わざれば、敵動かず。巽にして止まり蠱わす」「金の蝉、殻を脱ぐ」とは、現有の態勢を維持しているふりをしてひそかに主力を移動させ、戦略上の目的を実現する作戦であり。」
時代背景
紀元二一八年といえば、曹操が漢中に出動して益州の劉備軍を攻めていたときである。漢中から益州の都城成都までは約五百キロである。本計の蜀、魏両軍の争奪の戦場となった瓦口関は、四川省渠県の東方にあった。渠県は成都の東方二百七十キロの距離にある。本計の例話は、魏軍がすでに陣を敷いている瓦口関を、勇将張飛が知恵を絞って背後から攻めて奪取し、魏軍をしてやった要領を述べたものである。この『三国志』の英雄張飛は二一九年関羽が孫権に斬られたことを知り、その仇討を行う準備中、部下に刺されて死んだ。五十五歳であった。
張飛、間道を使い曹操をしてやる
陣地の原型を保持し、強大な威勢を誇示し、友軍にも疑間を抱かせず、敵軍にも軽挙妄動させずに、ひそかに主力を移動させ敵軍に打撃を与える。