第三十計 反って客が主に為る
「隙に乗じて足を挿し、其の主の機を扼し、漸く之れに近づく」「反って客が主に為る」(主客転倒す)というのは、機に乗じて敵軍を吸収し、客軍を変じて主軍に転ずる作戦であり、受動から主動に転じて、戦争の主導権を勝ち取るのである。」
時代背景
後漢の末期、献帝の許州遷都により、中国の権力中枢は宮廷を去って群雄に移り、闘争の舞台は長安・洛陽より東遷して中原、すなわち黄河流域の大平原での展開と変わった。このころ黄河の北には、袁紹と公孫瓚が覇を競っていた。袁紹は黄河に近い河内(河南省の黄河の北の地域)を基盤とし、その都城は鄴であった。一方、公孫瓚は薊(北京)に本拠をおいていた。本計の例話は冀州の韓馥に食糧補給を依存していた袁紹が、策略を使って韓馥の冀州を自分のものとするやり方を、この計に該当するものとして取り上げている。
袁紹、策を用いて冀州を奪う
空隙に乗じ介入して前進し、あらゆる手を尽くして敵軍の主要な機関と要害を支配下に置き、手順に従って漸進する。