第十九計 釜の底から薪を抽く
「其の力に敵せざれば、其の勢いを消す」「釜の底から薪を抽く」というのは、戦闘のカギを握る問題を自軍に有利に解決し、敵軍の戦闘能力を奪って勝利を勝ち取る作戦である。」
時代背景
本計の例話は、曹操が袁紹を破って河北を収めて三国時代をもたらした官渡の戦いの故事に基ずく。袁紹は後漢末期の群雄の一人で、後漢十二代の霊帝の死後、山東の豪族の盟主となって華北一帯を支配したが、二〇〇年、曹操に官渡で敗れてから衰退した。一方、曹操は黄巾の乱(農民の反乱)を討ち、董卓討伐軍に加わり、袁紹らを破って河北を統一したが、赤壁の戦いに敗れて江南に進出できなかった。その間、兗州の牧から後漢最後の皇帝十四代献帝を擁して都を河南の許に移し、魏王の位を得て実権を握った。兵法の造詣深く『孫子』に注をつけたが、そのとき後世の付加とみられる何十篇かを除いて『史記』の当時の旧形に復したといわれる。また文学を勧めていわゆる建安文学を興した。
曹操、敵の補給を断って勝つ
戦力が敵軍に及ばない場合には、敵軍と接触するのを避け、敵の戦力を消耗させる。