第二十七計 痴を仮りて癲わず
「寧ろ偽りて知らずして為さざるを作すも、偽りて知を仮りて妄りに為すを作さず。静かにして機を露さず」「痴を仮りて癲わず」とは、自軍に不利な形勢のもとでは、見せかけの情報を作り出して敵軍を欺き、自軍に対する敵軍の警戒心をゆるめさせ、その機に乗じて敵軍を殲滅する策略である。」
時代背景
本計の主人公の司馬懿は、諸葛孔明と戦い「死せる孔明、生ける仲達を走らす」といわれた仲達である。彼は魏の権臣として曹操・文帝・明帝・斉王に仕えたが、斉王の即位後、重臣である曹爽と対立するにいたり、二四九年にクーデターを起こし、曹爽勢力を一掃した。本計の例話は、曹爽と対立を深めたとき病気を装って曹爽を油断させ、彼が外出した隙を狙ってクーデターを起こし、軍の指揮権を奪い、曹爽勢力を駆逐したのを述べたものである。司馬懿はこのように遠謀深慮の士であったので、このあと九品官人法(魏の時代に始まった官吏の九つの階級)の内容を一変して、朝士の代表的地位を得るのに成功し、孫の司馬炎が魏の禅譲を受けて晋を建てる基礎を築いた。
司馬懿、病を装い曹爽を倒す
愚かで何もできないふりをしてもかまわないが、知ったかぶりから無分別な行動に出てはならない。ひそかに準備を整え、相手に気付かれないようにして、雷のようにエネルギーを蓄積して発散しないようにする。