第十二計 手に順って羊を牽く
「手に順って羊を牽く」とは、乗ずべき機会であればいかに小さいものでも利用し、得るべき勝利であればいかに小さなものでも得るという作戦である。」
時代背景
本計の例話は、春秋時代、呉の公子光が、楚を追われてきた伍子胥の協力を得て、呉王僚を倒して呉王闔閭(闔廬)になったときの物語である。呉ははじめ漢人と異なる蛮夷の国とされていたが、紀元前六世紀の王、寿夢のころから中原諸国と往来を始め、その子諸樊のころには次第に強国となり、越と対立した。諸樊(寿夢からかぞえて二代目の王)の跡の三代目ははっきりしないが、多分、次弟ではなかったかと思う。四代目の王は三弟の余昧であった。五代目は本来諸樊の子・光が継ぐべきであったが、余昧は自分の子・僚を王位につけた。怒った光は伍子胥と談らい僚から王位を奪おうとした。その奪い方が、順手牽羊の計、すなわちわずかな僚の隙に乗じて彼を倒したのである。
公子光、微隙を衝き呉王僚を斃す
わずかな隙でも絶対に利用しなければならないし、小さな勝利でも絶対に得なければならない。わずかな隙を利用し、小さな勝利を得れば、全面的な勝利の機会と発端を手に入れることができる。