第三十一計 美人を用いよ
「兵の強き者は其の将を攻め、将の智ある者は其の情を伐つ。将が弱く兵が頽るれば、其の勢自ら萎う。利用して寇を御し、順にして相保つなり」「美人計」は、美女(金品を含む)で敵を誘惑して女色(享楽)に溺れさせ、闘志をなくさせ、その機に乗じて勝利を収める作戦である。」
時代背景
本計の脇役董卓は、後漢末期の梟雄で三国時代の幕開けをもたらした男である。若いころから俠気に富み、羌族の首長たちを手なずけていた。このころは世情混乱し、その争乱鎮定に参加しているうちに強力な軍事力をもつようになり、暴逆の挙に出たため反董卓連合の反撃をうけた。やむなく自ら皇位につけた献帝を擁して洛陽から長安に遷都した。しかし長安に遷都した朝廷内でも、董卓誅殺の計画がすすめられていた。主謀者は司徒(丞相)の王允である。本計はこの王允が美女の貂蝉を使って董卓とその腹心呂布を争わせ、ついに呂布に董卓を殺させるが、その方法が美人計にあたるとしている。『三国志演義』のその件を採ったものと思われるが、「正史」には貂蝉の名はないという。
王允、美人計を用いて董卓を除く
勇猛な将兵を擁する敵軍に対しては、あらゆる手を尽くしてその武将を篭絡しなければならない。智謀の優れている敵軍の武将に対しては、その闘志を打ち砕かなければならない。敵軍の武将が闘志を失い将兵の士気が衰えれば、敵軍の戦力は自然に低下する。敵軍の弱点を利用して瓦解させれば、形勢に順応して自軍の戦力を保持することができる。